「暑い……」 一人の兵士が密林を掻き分け進んでいる。 「斥候の任務とはな……はぁ……」 そんな風に独り言をつぶやきながら、それでも兵士は的確にミッションを果たすための行動をしている。 斥候を任されるほどの能力これくらいは考えなくても体が動く。 ふと、人の気配が漂った。 (なにか…いる…。動物ではない…明らかに人の気配…。一人だな。この茂みの向こう…) 兵士は銃を構えいつでも対応できる体制をとる。 ここは作戦遂行場所からは遠いとはいえ見張りがいないとも限らないのである。 そして兵士はその茂みの向こう側に飛び込んだ。 「きゃっ……!?」 兵士の目に飛び込んできたものは確かに人ではあったものの、 年の頃17歳くらいの、長い金髪を後ろで二つに結んだ娘であった。 (原住民…?いや…しかしこの顔立ち…この地域のものでは…) そう思いながら兵士は娘に聞く 「何者だ?ここでなにをしている?」 しかし娘は近くに突き刺してあった、芋か何かを掘っていたであろうスコップに寄りかかり震えている。 (こいつ一人か…悪いが作戦のため死んでもらうか……。が、その前に……) 人気の無い森深く、日々訓練で女など縁遠い生活、そして目の前に震える娘。 兵士に邪な考えが首をもたげた。 「へへ…動くなよ…。」 銃を構えつつ近づく兵士。 こちらは銃。相手はよしんば反撃したとしてもスコップ。 戦力差は歴然だ。 そしてもし騒がれたとしても周囲に人の気配は無い。 (こんな震えた娘が反撃してこようともなにが出来るってんだ…) 兵士はそう考えながら、しかし銃口は向けたまま近づいた。 しかし、できる。できるのだ。 兵士はわかっていない、娘は恐怖で震えているのではない、 全身の筋肉を使いそのスコップを敵めがけて下から切り上げようとしているのを。 兵士は気づいていない、娘が敵が間合いに入るまでスコップが跳ね上がらないよう刃先を 右の足の親指と人差し指ではさんで止めていることを。 完全な油断である。 そして兵士がさらに歩を進めた… ーーーー瞬きーーーーー 気が付くと兵士の目の前に寸止めされている先ほどまで地面に突き刺さっていたスコップの刃先。 状況を把握するまで数秒… そう、今危険にさらされているのは娘ではない、自分なのだ。 反射的に右人差し指に力を込める しかし、いつも来るはずの振動、そして音がない… 相手から眼を離さぬよう手に持った銃を確認する。 振動がこないはずだ、音がならないはずだ。 あるべきはずの銃の半分がなくなっているのだから。 そう今目の前に突きつけられている物によって、自分の命を預ける武器は鉄屑にされていたのだ。 「その装備…」 娘が静かに口を開く。 だがその声は先ほどのか弱い悲鳴とは間逆、威圧感さえ感じられるものであった。 「Z国のものですね…。そんな兵士がこんな場所での作戦行動…  更にはその装備からして…斥候…ですね?」 この娘は軍事行動に精通している。兵士はこの一言でそう感じ取った。 理屈ではなく本能がそう感じ取ったのだ。 そんな兵士の心中を察したのか更に娘は続ける。 「さて…このような作戦に駆り出されたのですからそれなりの実力、および階級をお持ちですよね? もちろん同行願えますね?」 これほどの能力を持ち、軍事行動に精通した娘… 突きつけられたスコップの刃先… 武器を破壊され反撃すら出来ぬ自分… この意味を理解した時、兵士は状況を把握した。 あの時…、娘が自分の姿を見てスコップに寄りかかり震えた瞬間、すでに俺は捕虜になっていたのだ と…。 その後Z国の作戦は暴露され失敗に終わったのは言うまでも無い。 ーーー番外ーーー 尋問(?)風景  ※キャラと著しく違います。 栄子「兵士殿…ここは黙秘する場所では御座らん…」 栄子「上官は(尋問を)止めよとは申しておらん…」 栄子「君にはきっかり5分おきに質問する…。5分後確実に訪れる質問…この意味がわかるかな?」